抄録
26Sプロテアソームは数十のサブユニットからなる巨大なプロテアーゼであり、生体内の不要となったタンパク質を能動的に分解することによって、様々な生命現象の制御に機能している。26Sプロテアソームを構成する数十のサブユニットタンパク質は、単なる複合体の構造要素として機能するだけでなく、個別の機能をあわせもっている。しかし、植物におけるこれらサブユニットの機能はほとんどわかっていない。
本研究では、シロイヌナズナ26SプロテアソームのRPTタンパク質群に着目し、解析を行った。シロイヌナズナRPTタンパク質群はRPT1から6まで存在し、RPT3以外は重複がみられる。これらについて逆遺伝学的解析を行った結果、AtRPT2a欠損変異体およびAtRPT5a欠損変異体のみが、顕著な器官の巨大化を示した。こうした巨大化は細胞質分裂を伴わないDNA複製であるエンドリデュプリケーションの過剰促進によって、核内DNA量が増大したことに起因していた。
以上の結果から、RPT2aとRPT5aが同一の複合体を形成する可能性があると考え、遺伝学的および生化学的解析を行っている。研究成果をもとに、プロテアソームが関与する植物の細胞サイズの決定機構について議論したい。