抄録
BRCA2遺伝子は、ヒトの家族性乳ガンおよび子宮ガンの原因遺伝子として同定された遺伝子であり、Brca2タンパク質は、Rad51タンパク質と直接結合して相同組換えを促進すると報告されている。
我々は、シロイヌナズナのDsタギングラインの中からAtBRCA2aおよびAtBRCA2b遺伝子の変異体をそれぞれ1系統見いだした。これら変異体、およびこれらを交配した二重変異体の表現型を解析したところ、これら変異体はDNA損傷因子であるγ線やシスプラチンに対して感受性を示すことが明らかになり、Brca2タンパク質は高等植物の体細胞においてDNA損傷修復に関与していることが示された。また、atbrca2二重変異体では、帯化(fasciation)や葉序の乱れが観察され、この形態異常は、DNA損傷を与えることによってさらに高頻度で出現した。この様な結果から、atbrca2二重変異体では、DNA損傷修復の異常によって、茎頂分裂組織の秩序崩壊が起きていると推測された。さらにatbrca2二重変異体にCYCB1-GUSレポーター遺伝子を導入してCYCB1の発現を調べたところ、茎頂付近および根端において高い発現が認められたことから、atbrca2二重変異体の形態形成異常には、細胞周期の変化が関与していると考えられた。