日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
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FAMAは気孔分化最終ステップのマスター因子である。
*伊藤(大橋) 恭子Bergmann Dominique
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p. 0386

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抄録
気孔は、外界とガスや水分の交換を行う植物にとって必須な器官である。気孔は葉の表皮細胞がメリステモイド、孔辺母細胞を経て分化する一対の孔辺細胞により形成される。これまでの研究により気孔形成の位置やパターンを制御するシグナル伝達因子は複数明らかになっていたが、気孔分化を司る促進因子はわかっていなかった。そこで、私達は、気孔が過剰にできる植物体で発現量が増加し、逆に気孔が全く形成されない植物体で発現量が下がるbHLH型の転写因子FAMAに着目し研究を行った。機能欠損体 famaは全ての器官において気孔を形成せず、本来気孔となる細胞で過剰に細胞分裂を繰り返した細胞塊を形成した。これらの細胞は孔辺母細胞様の細胞であることがマーカー遺伝子の発現パターンによりわかった。FAMAの過剰発現体は対をなさない孔辺細胞を全ての表皮上に形成した。またFAMAの発現は孔辺母細胞から始まり若い孔辺細胞で強く、成熟した気孔では消えていった。これらの結果から、FAMAは孔辺母細胞から孔辺細胞への分化過程において働き、孔辺細胞への分化を促進し細胞分裂を抑制する機能を持つ気孔分化の最終ステップのマスター遺伝子であることが明らかとなった。
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© 2008 日本植物生理学会
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