抄録
シロイヌナズナのDREBタンパク質は、低温・乾燥・塩などのストレス応答に関与する転写因子である。これらの環境ストレス誘導性遺伝子の多くは、そのプロモーター領域にDRE/CRT配列と呼ばれるシス因子を持ち、DREBはDRE/CRT配列に特異的に結合することでそれらの遺伝子の転写を活性化する。DREB1は主に低温ストレス条件下で働き、DREB2は主に乾燥・高温・塩ストレス条件下で働く。イネにおいてDREB2ホモログは4つ存在し、その中で特にOsDREB2Bは他の単子葉植物におけるDREB2ホモログと似た遺伝子配列を持っている。OsDREB2Bは2種類の転写産物を持ち、その配列から一方のみが活性型タンパク質をコードすると考えられた。OsDREB2Bの転写産物は低温・塩などのストレス条件下で蓄積しており、定量的RT-PCRによる解析から活性型タンパク質をコードするmRNAの蓄積の増加率がもう一方と比べてより大きいことが示された。活性型のOsDREB2Bタンパク質は細胞内で核に局在していた。また培養細胞を用いたトランジェント発現解析の結果から、活性型のOsDREB2Bタンパク質はDRE配列に結合し、高い転写活性化能を示すことが明らかとなった。これらのことからOsDREB2Bタンパク質の活性化にはシロイヌナズナのDREB2Aのようなタンパク質レベルでの修飾は必要ないことが示唆された。現在、形質転換シロイヌナズナやイネを用いてOsDREB2Bの標的遺伝子の解析を行っている。