抄録
Heat Shock Protein 90(Hsp90)は、真正細菌やすべての真核生物に存在し、真核生物のサイトゾルHsp90は、調べられたすべての条件下で細胞の生存に必須のタンパク質である。Hsp90は、主要分子シャペロンHsp70やHsp60と同様にATPase活性を有している。近年大腸菌のHsp90(真正細菌ではHtpGと呼ばれる)の結晶構造が決定され、ATPaseサイクルに依存したダイナミックな構造変化が明らかにされた。しかし、ATP分解に伴う基質タンパク質の構造変化などのシャペロン作用機構については明らかにされていない。大腸菌や枯草菌などのhtpG破壊株では明確な表現型が現れず、HtpGの機能や標的タンパク質は同定されていなかった。しかし、我々はシアノバクテリアSynechococcus sp. PCC 7942株のhtpG破壊株において、HtpGが熱耐性獲得に必須なタンパク質であり、集光性超分子複合体フィコビリソームの構成タンパク質と特異的に相互作用することを明らかにし昨年の年会で報告した。本発表では、HtpGとの相互作用が顕著に見られたフィコビリソームの30 kDaリンカーポリペプチドを基質タンパク質として、HtpGとの相互作用に及ぼすヌクレオチドやその類似物の影響を調べたので結果を報告したい。このリンカーポリペプチドは45oC、20分の熱処理で凝集塊を形成するが、HtpGを添加するとその凝集は抑制された。ATP、AMP-PNP存在下では熱凝集は強く抑制されたが、ADP、Radicicol存在下では逆に熱凝集量は増加した。