日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
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好熱性シアノバクテリアにおけるセルロース定量法の確立と細胞凝集時のセルロース蓄積
*河野 祐介早乙女 敏行新谷 哲真落合 有里子片山 光徳池内 昌彦
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p. 0487

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抄録
我々は、Thermosynechococcus vulcanus RKNにおいて低温・光培養時の光阻害の回避のため菌体の凝集が起きること(平野ら、植物生理学会1997)、この凝集がセルラーゼ処理によって解消することを報告している(早乙女ら、セルロース学会 2005)。しかし、菌体を高濃度のセルラーゼで長時間処理しても完全消化できず、セルロースの蓄積を検証できていなかった。
今回、菌体の前処理法を詳しく検討し、エタノール中で超音波処理することが有効であることを見いだした。この前処理によって、短時間のセルラーゼ処理でセルロースを完全消化できるようになった。また、セロビアーゼによっても完全消化された。この方法を用いて低温・光培養におけるセルロースの蓄積を定量した。細胞凝集は従来通り24 h頃から始まり72 h後にほぼ完了したが、セルロースは6 h後に既に蓄積が認められ、72 hまで増加し続けた。一方、対照の45 ℃ではセルロースはほとんど蓄積されなかった。これらの結果はセルロースの蓄積が細胞凝集の原因であることを示唆している。一方、T. vulcanusに近縁なT. elongatus BP-1では低温・光培養時に細胞凝集は生じなかったが、T. vulcanus同様のセルロースの蓄積が確認された。これは、セルロース以外にも細胞凝集に関わる要因があることを示唆しており、今後の検討が必要である。
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© 2008 日本植物生理学会
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