抄録
被子植物における概日時計分子機構は、モデル双子葉植物シロイヌナズナを用いて盛んに行われ、その結果、シロイヌナズナ時計関連因子群の機能解明が著しく進展している。また、システムバイオロジーの観点から、高等植物の概日時計分子機構はMyb型転写因子LHY /CCA1、及び擬似レスポンスレギュレターファミリーPRRsにより構成される3フィードバックループモデルが提唱されている。一方、被子植物において概日時計関連因子群がどのような進化過程を経てきたのかについては未だ明らかになっていない。そこで、被子植物のモデルとして全ゲノム解析が完了したシロイヌナズナ、イネ、ポプラの3種を用いて、概日時計関連因子群の分子系統学解析をイントロン・エクソン構造比較、分子系統樹、染色体シンテニー比較を用いて行った。これらの比較ゲノム解析の結果、概日時計関連因子群には全ゲノム重複による遺伝子重複、及び全ゲノム重複後の重複遺伝子の欠失が頻繁に生じていることを見出した。また、概日時計関連因子群は単子葉植物と双子葉植物が分岐する以前にすでに多様化していたことが示唆された。