抄録
シロイヌナズナの概日リズムは、中心振動体を構成するLHY/CCA1とTOC1が相互に転写を制御することで生じている。さらに近年、TOC1と同じ遺伝子ファミリに属するPRR5,PRR7およびPRR9が中心振動体の構成要素であることが報告されている。このPRR5,7,9の三重欠損体の場合、胚軸は赤色および青色、近赤外光に対する感受性を失い、徒長するが(Nakamichi et al, 2005)、葉は光に応答し、恒明条件下では弱い矮小性を、明暗条件下では、葉柄の徒長および葉身の伸長抑制という、避陰応答に類似した表現型を示す(Niimura et al.,投稿中)。そこで、このprr5/7/9について、避陰応答のマーカー遺伝子AtHB-2およびPIL1の葉での発現を解析したところ、明期では野生株と同様に発現が低かったが、暗期では野生株と比較して著しく高かった。以上の結果から、明暗条件下でのprr5/7/9の葉の展開抑制および葉柄の徒長は、暗期では抑制されるべき避陰応答が抑制されなかったためと推測された。また、胚軸の徒長は明暗条件の影響を受けなかったことから、葉には胚軸とは異なる独自の避陰応答制御機構が存在し、それがPRR5,7,9によって制御されていることが示唆された。本発表では以上に加え、避陰応答の制御に関わる遺伝子の発現解析の結果を交えて、葉独自の避陰応答制御機構について考察する。