抄録
ほ乳類の褐色脂肪細胞BATで発現する脱共役タンパク質UCP1は、ミトコンドリア電子伝達鎖を介して形成されたプロトン濃度勾配を積極的に解消して熱の産生を誘導する。発熱植物ザゼンソウでは、2つのUCP(SfUCPA、SfUCPB)をコードするcDNAが単離されていたが、我々の研究によりSfUCPAが主たるUCPタンパク質であることが明らかとなった。そこで本研究では、本植物の熱産生におけるSfUCPAの役割を明らかとするため、SfUCPAの生化学的解析を行った。本植物からミトコンドリアを単離してSfUCPAの局在を調べたところ、ミトコンドリア内膜局在が明らかとなった。サフラニン蛍光を用いたミトコンドリア膜電位変化の測定により、UCP活性の指標である遊離脂肪酸による膜電位の低下が観察された。異なる組織や異なる分化ステージにおけるSfUCPAの発現解析を行ったところ、転写レベルでは全ての組織およびステージで一様に発現していたが、翻訳レベルでは発熱組織および発熱ステージ特異的な発現が見いだされた。さらにSfUCPAはミトコンドリア全タンパク質の約3%を占めており、BATミトコンドリアで発現するUCP1に相当する高いレベルで発現していることが明らかとなった。現在、SfUCPAをリポソームに再構成してプロトン輸送活性についての検討を行っている。