抄録
好熱性シアノバクテリアThermosynechococcus vulcanus 由来の光化学系 II (PS II ) 反応中心複合体を直径23 nmの細孔を持つシリカ多孔体SMMへ導入し、SMMへの吸着によるPS II への影響を調べた。シアノバクテリアPS IIの分子量は756 kDaの非常に大きな膜タンパク質複合体である。このような巨大複合体を入れ得る大口径の細孔をもつシリカ構造体の検討例はすくなく、タンパク質導入もおこなわれていなかったが、本実験のためにこれを開発した。SMMへの吸着量は先に報告した光化学系I単量体の場合に比べてややすくなかった。吸着後もPS II の酸素発生効率は維持されたが、約半分に低下した。SMMに吸着したPS II の色素環境、タンパク質の構造は溶液中の場合とほとんど同じである事を吸収と蛍光スペクトルから確認した。これらの事から、SMMへ吸着後もPS II の構造はほぼ保たれ、酸素発生活性を示すことがあきらかになった。さらに細孔内での反応特性を検討した。