抄録
PsbY、PsbZは光化学系II(PSII)複合体に存在する5kDaと6.5 kDaの膜貫通蛋白質である。我々はThermosynechococcus elongatus BP-1を用い、psbY, psbZ遺伝子破壊株( ΔpsbY, ΔpsbZ)を作製した。
ΔpsbZ株では、野生株に比べ、精製PSII複合体での酸素発生活性が40-50%ほど減少すること、PsbZはPSII複合体内でのPsbKとYcf12の安定化に関与することをすでに報告している。活性低下の要因としてMn量の低下が疑われる。精製PSII複合体に結合しているMn量について野生株と ΔpsbZ株で比較した結果を報告する。
SynechocystisでのPsbY欠損株ではCaCl2を含まない培地での強光下での生育阻害、精製PSII複合体での表在性蛋白質減少による活性低下が報告されている。強光、通常光、弱光下の生育ではT. elongatus BP-1の野生株とΔpsbY株の間に差はなかった。CaCl2を含まない培地でも同様であった。細胞、チラコイド膜、精製PSII複合体での酸素発生活性は野生株に比べて、活性が20-30%減少していた。BN-PAGEからPSII2量体化に影響がないことが明らかになった。構成蛋白質の比較、さらに結晶構造解析からΔpsbY株のPSII複合体ではPsbYのみが消失しており、表在性蛋白質への影響は見られなかった。