抄録
光化学系IIにおける表在性蛋白質 PsbO, PsbP, PsbQはマンガンクラスターを安定化し、酸素発生反応におけるCa2+及びCl-の要求性を制御することが知られている。しかし、こうした機能発現の具体的なメカニズムは、未だ解明されていない。そこで我々は、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)を用い、表在性蛋白質の酸素発生反応への構造的な関与について調べた。ホウレンソウの光化学系II膜標品からPsbP 及びPsbQを除去することにより、S1→S2遷移のFTIR差スペクトルにおけるアミドIバンドに明らかな変化が観測された。しかし、さらにPsbOを除去した試料では、スペクトルにそれ以上の変化は見られなかった。PsbPを再結合することにより、これらのアミドIバンドの変化は回復したが、PsbPのN末端から15残基を除去したΔ15PsbPではその回復は見られなかった。また、13C置換PsbPを再結合した場合、非置換PsbPと同じアミドIバンドの変化が観測された。これらの結果より、PsbP のN末端部分(<15残基)が酸素発生系と直接的に相互作用し、その蛋白質コンフォメーションに影響を与えることが示された。このPsbPの直接的相互作用が、酸素発生系におけるCa2+及びCl-の親和性を上げ、それらの保持能を高めていると考えられる。