抄録
菌類体内にシアノバクテリアや緑藻類が共生している地衣類中の光合成系を、高分解能分光器を備えた共焦点レーザー顕微鏡システムによる蛍光測定により解析した。測定系の空間分解能は200nm(x-y平面)x1μm(z軸)、波長分解能は1nmである。レーザー光励起により1細胞ごとにスペクトル測定やイメージングを行い、地衣類組織内部でのシアノバクテリアの光合成系の状態と分布を調べた。 菌類内にシアノバクテリアが共生する地衣類としてウラミゴケ、カワホリゴケ、モミジツメゴケ、チヂレツメゴケの4種を試料とした。地衣類内部の3次元蛍光スキャン画像と蛍光スペクトルを測定し、シアノバクテリア細胞の生育状況、地衣類内部でのシアノバクテリア細胞の構造、ヘテロシストへの分化の程度、形態の多様性を調べた。ウラミゴケ、カワホリゴケの組織内部ではシアノバクテリアがフィラメント状に存在した。一方、モミジツメゴケ、チヂレツメゴケではフィラメントの形成は判別できなかった。かなり異なる共生の状態が確認された。