抄録
シロイヌナズナの変異体cfa1(chlorophyll fluorescence alteration)は、暗順応した後に強光を照射した際に、野生株と比較して初期段階のクロロフィル蛍光が高いという表現型を示す変異体として単離された。cfa1は弱光生育条件においてわずかに生育が悪くなり、強光生育条件ではさらに生育速度が遅くなる。しかし、原因遺伝子については明らかになっておらず、また、このような表現型がどのようなメカニズムによってもたらされているのかも不明である。そこで本研究では、変異体のより詳細な解析によりCFA1の機能を解明することを目指した。0%二酸化炭素、40 μmol/m2/sの光の下で酸素濃度を変えてパルス変調蛍光測定を行なうと、cfa1では2-5%の酸素濃度条件でのみ、光化学消光(qP)および非光化学消光(NPQ)が野生株と比較して大きく減少していた。このような条件では、cfa1の電子伝達鎖はより過還元的になり、熱放散の誘導も抑制されると解釈できる。0%酸素条件においては差が見られないことから、CFA1は光呼吸又はwater-water cycleといった酸素依存的な反応において、酸素との親和性を高める働きをしているのではないかと結論した。cfa1におけるこのような光合成経路の欠損が、電子伝達鎖の過還元状態と伴に熱放散の抑制をもたらしていると考えられる。