抄録
Lemna属のウキクサ(アオウキクサ属、単子葉類)は1950年代から花成誘導・光周性・概日リズム等の研究に用いられてきた。特に1964年に短日性のL. paucicostata 6746を用いてHillmanが行った光周性花芽誘導の実験は、生物一般の光周性反応における概日時計の役割を明示した点で重要な業績であった。また、同属のL. gibba G3は明確な長日性を示すことから、光周性の重要な実験材料として生理学的解析が続けられてきた。一方で、分子生物学的解析はほとんどなされていなかったため、私たちは2001年より光周性花芽誘導と概日時計の分子機構の解明を目指した新たな解析手法の開発を行ってきた。それからの研究を通して、分子生物学的解析を行う上で応用可能な様々な特質をウキクサが持っていることを見いだしてきた。本発表では、私たちがこれまでに取り組んできたレポーター系・機能解析系・光周性誘導実験系・純系株の確立・遺伝学的実験系を含め、実験生物としての可能性を広く議論する。