抄録
アマモ(Zostera marina)は、海中の砂泥地に生育し、地下茎および種子によって繁殖する単子葉植物である。陸上植物では、種子の発達・成熟・休眠・発芽に関して、多くの生物学的知見が蓄積されてきた。それに対して、アマモの種子に関する研究はほとんど進んでいない。そこで我々は、アマモ種子の発達と発芽について生理学的観点から解析を試みた。まず、天然のアマモ群落(横須賀市走水地先)において、さまざまな開花後日数の果実および種子を採取し、その長軸長・重量・含水率から発達段階を規定した。果実の長軸長と乾燥重量は開花後28日目に最大となり、成熟した種子は開花後35日目に母植物体より分離された。また、種子発達後期には種子を含む果実の含水率の低下が観察された。続いて、成熟種子を用いて発芽特性の解析を行った。アマモ種子の発芽は、水温15℃から20℃、海水濃度22.5‰以下で促進された。また、マンニトールあるいはポリエチレングリコールを用いて、さまざまな浸透圧条件下での発芽を解析したところ、浸透圧が低いほど発芽が促進されることが示された。これらの結果より、アマモの種子発達は陸上植物と類似していること、種子発芽は低温と低浸透圧によって誘導されることが明らかになった。現在、発芽時の含水率の変化や植物ホルモン(アブシシン酸、ジベレリン)の効果についても解析を進めている。