抄録
側根形成は維管束植物の根系構築に不可欠な発生現象である。多くの植物種において、オーキシンが側根形成を制御していることが知られているが、そのメカニズムにはまだ不明な点が多い。われわれは、オーキシンシグナルから側根形成にいたる分子カスケードの解明を目指し、シロイヌナズナを材料に研究を進めてきた。変異体を用いた分子遺伝学的な解析より、側根形成においてSLR/IAA14やAuxin Response Factor 7 (ARF7)およびARF19によるオーキシン応答性の転写制御が重要であること、さらにこれらの下流でLATERAL ORGAN BOUNDARIES domain 16 (LBD16)およびLBD29が機能することがすでに明らかになっている (奥島ら、2007)。LBDタンパク質群も転写因子として機能すると考えられるため、現在、側根形成で働くLBD16の下流遺伝子の同定を目的に、マイクロアレイを用いた解析を行っている。arf7 arf19二重変異体は側根形成能を顕著に欠くが、LBD16の過剰発現により部分的に側根形成能が回復する。このことを利用し、arf7 arf19二重変異体背景でLBD16の時期特異的な機能活性化に伴って発現上昇する遺伝子を探索している。本発表では、複数のLBD16下流遺伝子候補について、発現解析やノックアウト変異体の解析の結果を報告する。