抄録
我々は、Full-length cDNA Over-eXpresser gene (FOX) hunting systemを用いたイネ完全長cDNAの機能解析の過程で、2,4-D存在下でもカルスが緑化した2つのFOXイネ系統を得た。両系統はGARP転写因子をコードするOsGLK1遺伝子を高発現しており、これらのカルスにおいてグラナを持つ葉緑体が発達し、一連の葉緑体関連遺伝子の発現も上昇していた(中村ら、2007年度年会)。その後、我々はOsGLK1緑色カルスが光合成活性を示すこと、低ショ糖濃度でも生育可能であることを新たに見出した。これらの知見は発達した葉緑体が実際に機能していることを示すもので、OsGLK1はプロプラスチドから葉緑体への発達におけるマスターキーの役割を果たすと考えられる。そこでOsGLK1がどのような遺伝子の発現を調節しているかを探るべく、イネ44kオリゴマイクロアレイを用いて解析した。OsGLK1-FOXカルスでは葉緑体ゲノムコード遺伝子の発現も上昇していたが、その発現を調節するシグマ因子の発現量も増加していた。また、クロロフィル生合成系に関しては、プロトポルフィリン合成以降の葉緑素生合成系酵素遺伝子群の発現が顕著に増加していた。本発表では、これらの結果をもとに、OsGLK1が葉緑体分化にどのように関与しているのかについて考察したい。