抄録
葉緑体は固有のゲノムと独自の遺伝子発現機構を持ち、葉緑体遺伝子の発現は主として翻訳段階で調節されている。葉緑体形質転換技術が確立されて以降、多くの研究者によって、葉緑体ゲノムに外来遺伝子を導入し、有用タンパク質を発現させる研究が進められている。しかし、導入した外来遺伝子が転写はされても翻訳されない場合が少なからず存在する。我々は、葉緑体で翻訳しなかった動物ウィルス遺伝子のタンパク質コード領域を改変することにより、葉緑体で翻訳させることに成功した。このことは、葉緑体mRNAの翻訳調節には5’非翻訳領域だけでなく、タンパク質コード領域も大きく関わっていることを示唆している。本研究では、葉緑体mRNAの翻訳調節におけるタンパク質コード領域の影響について、タバコ葉緑体psbA mRNAをモデルに、葉緑体in vitro翻訳系を用いて解析した。