抄録
2C型脱リン酸化酵素 (PP2C) をコードするABI1は、シロイヌナズナにおけるアブシジン酸 (ABA) シグナル伝達系の負の制御因子として機能する。abi1-1はABI1の1アミノ酸置換により脱リン酸化活性が低下するにもかかわらず、より強力な負の制御因子として機能することが知られている。これまでにABI1と相互作用するタンパク質が複数報告されているが、ABI1およびabi1-1による負の制御機構を説明するには至っておらず、ABI1によるABAシグナル伝達系の制御機構は未だ明らかにされていない。現在までに我々は、シロイヌナズナとは進化的に遠く離れたヒメツリガネゴケ (Physcomitrella patens) においてもABI1相同遺伝子PpABI1Aを介したABAシグナル伝達系が存在することを明らかにしている。ヒメツリガネゴケ原糸体は2種類の細胞のみからなる均一な細胞集団であり、かつ明確なABA応答を示す。このことを利用して、今回我々はPpABI1Aと相互作用する因子を酵母ツーハイブリッド (Y2H) 法によりスクリーニングすることを試みた。Baitタンパク質としてはPpABI1Aにabi1-1と同様の変異を導入したppabi1a-1を用いた。これまでに70万クローンを検定にかけ、約250の陽性のクローンを得ている。本報告では得られたクローンの解析結果について報告する。