日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
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水稲葉枯症の発症とストレス応答成分による診断
*澤田 寛子藤山 正史渡邉 大治土谷 大輔藤原 伸介
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p. 0925

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抄録
長崎県の北部中山間地帯では、水稲上位葉の葉縁部が枯死する葉枯症が古くより問題となってきた。本障害の症状は白葉枯れ病に似るが、障害葉からはこれまで病原菌が検出されておらず、また根部についても障害株と健全株との間に明確な差が認められていない。本障害が多発する地域の多くは、下方にダムがあり酸性の霧が発生しやすいという地形及び気象条件の共通性を持つが、真の発症要因の究明には至っていない。本研究では、葉枯症多発地域の圃場で栽培された葉枯症感受性の異なる水稲3品種について、葉身部のストレス応答成分を、酸性霧が発生し気象が急変する時期や障害が発生する時期に分析して、気象条件との関係や水稲品種間におけるストレス応答性の違いについて検討した。
葉枯れ症多発地域では、日中の最低pHが3~4を示す酸性霧が7月中~下旬にかけて連続発生し、霧が晴れてからは急激に日射量が上昇した。葉枯症は気象急変期以降の8月初旬に確認され、8月下旬になると例年以上に激発した。障害葉や葉枯れ症感受性の強い品種で高い値を示したエチレン前駆物質ACCの結合体は、酸性霧の発生期において上昇傾向にあり、この時期に既にストレスが負荷されている可能性を示した。ストレス応答成分のポリアミンについては、日射量が急上昇する時期に水稲品種間の葉枯症感受性の差を反映して変動することが明らかになった。
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© 2008 日本植物生理学会
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