抄録
芳香族アルカロイドの一種β-フェネチルアミン(β-PEA)は、サボテンやアカシア、ヌスビトハギなどの多年生樹木に含まれることが知られている。類縁アルカロイドの中には、N-methyl-tyramineやN-methyl-mescalineをはじめとして、動物の中枢神経系に薬理作用を示すものが多く、これら成分を多く含む植物は古くより民間療法にも利用されてきた。私達はこれまでに、β-PEAがダイズ、アズキ、キマメ、ササゲ、ナタマメ、クロタラリアといった、Bradyrhizobium属菌と親和性の高いマメ科作物中に含まれていること、その分布は根粒組織に特異的であり、宿主植物の他の組織からは検出されないことを見出した。ただ、唯一の例外は落花生で、Bradyrhizobium属菌が共生しているはずの根粒中にはβ-PEAがまったく検出されなかった。そこで今回は、栽培地点の異なる多品種の落花生および大豆から根粒を採取し、再度β-PEAの存在について調査を行った。また、圃場で栽培した落花生および大豆の根粒から菌を分離し、共生菌の同定を行うとともに、宿主作物への相互接種試験を行い、β-PEA生成の有無について調べた。その結果、β-PEAの生成には、共生菌のBradyrhizobiumおよび宿主植物側の誘導因子の双方が強く関わっていることが示唆された。