日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
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ウイルス感染によるタバコのモザイクパターン形成機構の解析
*平井 克之久保田 健嗣望月 知史津田 新哉飯 哲夫
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p. 0968

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抄録
タバコモザイクウイルス(TMV)がタバコに全身感染すると,新たに展開する上位葉にモザイク模様が現れる.接種後最初に展開するモザイク葉は,先端側にウイルス蓄積の多い淡緑部が,基部側にウイルス蓄積の少ない濃緑部が形成されるという特有のパターンを呈する.RNAサイレンシングはウイルスに対する抵抗性に重要であり,病徴発現への関与も示唆されている.本研究では,モザイク病徴の発現過程におけるRNAサイレンシングの役割を明らかにすることを目的とした.サイレンシングを抑制した形質転換タバコにTMVを感染させたところ,濃緑部が形成されず葉全体が淡緑部様となったことから,濃緑部の形成へのRNAサイレンシングの関与が示唆された.ウイルス分布の経時変化を解析した結果,将来淡緑部になる先端部では,感染後の早い時期から葉脈だけではなく葉肉全体に感染が認められるのに対し,濃緑部になる基部では,ウイルスは主脈にのみ局在していた.また,モザイク葉では,ウイルスに対するRNAサイレンシングが非感染領域を取り囲むように,濃緑部の周縁の淡緑部と接する狭い帯状の領域と濃緑部内の主脈沿いで局所的に確立していた.これらの結果から,RNAサイレンシングは,先端部から基部側へのウイルス感染の拡大を阻止するとともに,基部ではウイルスを主脈に局在させるように機能し,その結果として病徴パターンが形成されると考えられた.
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© 2008 日本植物生理学会
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