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様々な生物学的現象の解析において正遺伝学は極めて有効である.しかしながら一方で,多くの時間と労力,費用を要するという問題点がある.我々はこのような正遺伝学の問題点を解消するため,従来法より高精度・低価格のタイリングアレイ(AtMap1)を設計し,それを用いた欠失変異の同定法の確立を試みた.野生型,変異体のそれぞれのゲノムDNAをAtMap1アレイにハイブリダイズすることで,変異体における欠失領域が変異体に由来するシグナルが低い領域として検出できる.既知の欠失変異体を用いた解析の結果,AtMap1アレイによる欠失変異の検出は有効であることが示され,同時に未知の欠失変異を発見することができた.しかしながら,比較的小さな欠失や転座・逆位などの変異の検出は難しく,すべての変異を同定できるわけではない点に注意を要する.AtMap1アレイによる欠失変異同定のコストは1変異体あたり17,000円,所要時間は3日であり,従来の連鎖ベースのマッピングと比較して,コストは数分の一,所要時間は数十分の一である.また,エコタイプ間で多型が大きい形質の変異や,マーカー情報の乏しいエコタイプ上の変異,復帰変異など連鎖ベースのマッピングでは同定が困難な変異には特にAtMap1アレイによる欠失領域の同定が有用と考えられる.