日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
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AOXはC/Nバランサーとして機能するのか?
*蜂谷 卓士渡邊 千尋寺島 一郎野口 航
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p. S0033

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抄録
C/N比の増加を引き起こす低窒素条件では、ミトコンドリアへの窒素の分配率が増加する。このとき、TCA回路の酵素群だけでなく、電子伝達系のコンポーネントも大きく変化する。低窒素条件により顕著に誘導される電子伝達系タンパク質の一つとして、オルタナティブオキシダーゼ(AOX)が知られている。AOXは植物に特有のコンポーネントであり、ユビキノンから酸素への電子の受け渡しの際にH+の移動がない。このためAOXへの電子伝達はATPの合成に結びつかず、還元力は無駄に消費される。その一方、H+の電気化学的勾配に律速されることなく、過剰な還元力を散逸することができると考えられている。AOXのアンチセンス培養細胞を低窒素環境で生育させると、野生型と比較してC/N比や糖濃度の増加がより大きくなる。これは、AOXが過剰な還元力(糖)を消費することにより、C/Nバランサーとして機能することを示唆する。近年、アンモニウムもしくは硝酸を窒素源とすると、AOXの遺伝子発現や最大活性は、それぞれ増加もしくは減少することが明らかになった。我々は、シロイヌナズナにおける、これらの増減に機能する主要なAOX遺伝子として、AOX1aを同定した。さらにAOX1aの発現は、窒素化合物によって正負に制御されていることも明らかになってきた。本講演では、AOXだけでなく、他の植物特有の電子伝達コンポーネントも含めた呼吸系のC/Nバランサーとしての機能について議論したい。
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© 2008 日本植物生理学会
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