抄録
自殖を防ぐための遺伝的メカニズムとして、ナス科植物はS-RNase型自家不和合性を有し、雌しべ側因子としてS-リボヌクレアーゼ(S-RNase)が、花粉側因子としてS-locus F-box(SLF)が同定されている。SLFは、花粉内においてS-RNaseの非自己アレルの産物を特異的に認識し、26Sユビキチン・プロテアソーム経路によるその分解を誘導することによって、和合性受粉を可能にしているものと考えられてきた。しかしながら、アレル間で高い配列多型性を示すS-RNaseと比べ、SLFの多型性は極めて低く、どのようにして非自己S-RNaseの多くのレパートリーを識別しているのか、謎であった。我々は形質転換体を用いたin vivo機能アッセイおよびタンパク質相互作用アッセイを行い、ペチュニア(ナス科)では少なくとも3つのタイプの異なる遺伝子にコードされたSLF(タイプ-1, -2, -3 SLFs)が、花粉側因子として協調的に機能し、それぞれが一部の非自己S-RNaseを分担して認識していることを明らかにした。本研究をもとに、協調的非自己認識システムを提唱する。