日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
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光合成水分解反応の赤外分光解析:DOD変角振動による水分子の検出
*鈴木 博行杉浦 美羽野口 巧
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p. 0163

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抄録
光合成水分解反応は光化学系II(PSII)において行われ、2分子の水が1分子の酸素と4つのプロトンに分解する。この反応は、S状態と呼ばれる中間状態 (S0-S4) の光誘起サイクルにより進行することが知られているが、基質水分子の反応メカニズムについては、未だほとんど解明されていない。本研究では、フーリエ変換赤外 (FTIR)法を用いて、水分解系に存在する水分子(D2O)のDOD変角振動を検出し、その反応過程を調べた。D216O及びD218Oで水和したT. elongatusのPSIIコア蛋白質に閃光を照射し、各S状態遷移によるFTIR差スペクトルを測定した。得られたスペクトルのDOD変角振動領域(1250-1150 cm-1)には、D216OとD218O間で明らかな違いが観測された。D216O-D218O二重差スペクトルを計算することにより、反応に関与するD2O分子のみのDOD変角バンドを得た。各スペクトルにおいて、6-8つのピークが観測されたことから、どの遷移においても少なくとも2分子の水が関与していることが示された。S2→S3及びS3→S0遷移における1240 cm-1付近の負のバンドに対応するバンドが他の遷移に観測されないことから、基質水分子はこれらの遷移において蛋白質内水クラスターから水分解系に取り込まれることが示唆された。
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© 2009 日本植物生理学会
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