日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
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高湿度に応答してABA 8’-水酸化酵素が維管束と気孔細胞で活性化され、気孔開放に関与する。
*岡本 昌憲神谷 勇治関 原明南原 英司
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p. 0465

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抄録
植物は刻々と変化する大気中の湿度を感知して、気孔の開閉を制御している。植物が低湿度にさらされた場合、気孔閉鎖に伴い、内生ABA量が増加することはよく知られている。一方、植物を高湿度に移行すると、1時間以内に内生ABA量が減少し、気孔が開放されることを我々は見いだした。高湿度に応答して、ABA 8’-水酸化酵素のCYP707A3とCYP707A1の遺伝子発現量が増加し、ABAの代謝産物が蓄積した。高湿度移行後、cyp707a1 cyp707a3変異体では気孔の開放が抑制され、さらに、これら二重変異体では気孔開放の抑制が向上した。興味深いことに、高湿度後の内生ABA量はcyp707a3変異体で高く維持されており、cyp707a1変異体では僅かな蓄積量であった。プロモーターGUSを用いた実験から、高湿度に応答してCYP707A1は主に孔辺細胞で、CYP707A3は維管束で染色が観察された。維管束が存在しない表皮細胞では、 cyp707a1 変異体のみが外からのABAに対して高感受性を示した。以上の結果から、高湿度に応答して、CYP707A3は維管束において植物全体の主要なABA量の不活性化を担い、孔辺細胞へ移動するABA量を調節しており、一方、CYP707A1は孔辺細胞において孔辺細胞自身の内生ABA量を制御して、気孔の開放に関与していることが示唆された。
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© 2009 日本植物生理学会
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