抄録
通常の翻訳では、翻訳開始複合体がmRNA上の最も上流に存在する翻訳開始コドンを認識することで翻訳を開始する。しかし一部には、翻訳されるべきタンパク質をコードする領域 (Major ORF) の上流に短いORF (Upstream open reading frame : uORF )を持つmRNA が存在ことが知られている。これらのmRNAでは、uORFが下流のMajor ORFの翻訳を制御していることが報告されている。OsMac1 遺伝子の5’UTRは、選択的スプライシングが生じるために、3種のスプライシングバリアントが存在し、それぞれの5’UTRには3個のuORF が存在することがわかった。そこで、この 5’UTRが下流のORFの翻訳に対してどのような影響を与えているかを解析した。OsMac1のこれらの3種のスプライシングバリアントに対応する 5’UTR の下流に GUS 遺伝子を連結したレポーター遺伝子を構築し、イネ培養細胞(カルス)に導入した。これらの形質転換体カルスにおけるGUS活性を調べたところ、3種のうちの1種の5’UTRでは非常に強いGUS活性が検出された。一方、その他の2種では、コントロールよりも弱いGUS活性が認められた。これらの結果から、OsMac1では、5’UTR 選択的スプライシングによって下流ORFの翻訳量に差が現れることが示唆された。