抄録
マグネシウム(Mg)欠乏症はウリ科植物等で最もよく見受けられる障害の一つであり、果実期に下位葉から急速な黄化症状を呈し、深刻な影響を与える。Mg欠乏症を理解するためには、Mg輸送に関する知見が求められる。そこで我々は、モデル作物であるイネを用い、Mgの分布および吸収様式を調べ、Mg輸送体遺伝子の単離を試みた。まず、Mg欠乏処理を施したイネ中のMg含量の変化を調べた結果、-Mg処理をしたイネ幼植物中のMg含有量は、根および各葉で直ちに減少し、およそ1週間で下位の成熟葉にネクロシスが現れた。次に、導管液中Mg濃度を測定したところ、水耕液中Mg濃度が低いほど導管液中Mgの濃縮率が高かったことから、根においてMgを積極的に吸収していること、すなわち能動輸送であることが示された(Km値は約50 μM)。これらの結果から、Mgの吸収及び移行には輸送体の役割が重要であることが示唆された。そこで、イネゲノムからシロイヌナズナMg輸送体(AtMGT10)のホモログである6つの候補(OsMGT1-6)を挙げて解析を行っている。Mg輸送能欠損酵母を用いた機能相補実験により、OsMGT1など複数がMg輸送能を有することを確認した。現在、発現組織および細胞内局在について、リアルタイムPCRを用いたmRNA蓄積量の解析及び、細胞内発現部位の解析を行っている。