日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
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スクローストランスポーターのプロモーターで発現制御したOsYSL2は,胚乳部位への鉄移行を強化する。
*石丸 泰寛増田 寛志青木 直大大杉 立井上 晴彦高橋 美智子中西 啓仁森 敏西澤 直子
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p. 0825

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抄録
鉄欠乏症の人は,世界中に20億人を越えるといわれ,ヒトの微量栄養素欠乏症の中で特に深刻である。遺伝子組換えの手法によって,種子,特に可食部である胚乳の鉄含有量を高めたイネを創製することができれば,鉄欠乏症の改善に大きく貢献できる。胚乳の鉄含量を高めるためには,適切な鉄トランスポーターを選択し,それを厳密に制御することが必要となる。
植物体内の鉄移行には,鉄のキレーターであるニコチアナミン(NA)が必須であることを明らかにしている。そこで,我々は鉄-NA,マンガン-NAを輸送するトランスポーター,OsYSL2の解析を行った。OsYSL2のRNAiイネを解析したところ,種子中の鉄含有量,特に胚乳部分の鉄含有量が減少し,OsYSL2は,胚乳への鉄の移行に重要な役割を持つことを明らかにした。そこで,種子中の鉄含有量を増加させようと,OsYSL2の過剰発現イネを作製したが,鉄含有量は逆に減少していた。適切なプロモーターによってOsYSL2を制御しなければ,種子中の鉄含有量は増加させることができないことが明らかとなった。そこで,登熟期にアニューロン層に強く発現するスクローストランスポーターのプロモーターの下流にOsYSL2をつないだコンストラクトをイネに導入した。その結果,胚乳部分に2~4.4倍もの鉄を蓄積させることに成功した。
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© 2009 日本植物生理学会
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