抄録
液胞膜のアンチポーターは細胞質と液胞間のイオンバランスを取ることにより塩や浸透圧ストレスから植物を守っている。我々は、冠水耐性イネ品種FR13Aを冠水ストレス処理することで誘導される数種の遺伝子の一つとして大腸菌のアンチポーター(ChaA)を調節するChaC遺伝子と相同性を持つOsChaC遺伝子を単離した。OsChaC遺伝子を過剰発現したタバコにおいて、塩ストレス下で野生型に比べ、成長阻害が軽減し、高い光合成活性と水分保持量を示した(Uddin, Tanaka et al.: PCP 2008)。本タンパク質はイネの液胞膜表面に局在していることから、液胞膜にあるアンチポーターを調節していると考えた。今回は、シロイヌナズナにOsChaCと相同性の高い3種の遺伝子の存在が確認されたので、それぞれのChaC(AtChaC1, AtChaC2, AtChaC3)をクローニングし、それぞれのChaCのストレス誘導性について検討した。過剰発現、機能抑制シロイヌナズナを作出し、機能解析、ストレス耐性評価を試みた。ChaCを大腸菌で大量発現、単離し、ChaCアフィ二ティークロマトグラフィーにより、ChaCと相互作用するアンチポーターの単離も試みた。また、食糧作物であるジャガイモ(Solanum tuberosum L. cv. Atlantic)に導入し環境ストレス耐性評価を行った。