抄録
グルタレドキシン (GRX) は、グルタチオンの還元力を用いてタンパク質のジスルフィド結合を還元し、活性酸素に対する防御やレドックス調節に働いている。GRXはシロイヌナズナで31個、イネでは27個のホモログ遺伝子が存在しているが、そのほとんどは生理的機能が不明である。我々は、これまでにイネGRX1aが登熟種子および完熟種子で多量に発現していることを明らかにしている。本研究では酸素ストレス防御におけるGRX1aの機能を調べるために、酵母発現系を用いた解析と過剰発現形質転換イネの作出・解析を行った。
イネGRX1aを発現させた酵母では、過酸化水素に対する耐性はコントロールと差が見られなかったが、メナジオンに対して高い耐性を示した。また形質転換イネの緑葉においてGRX1aを異所的に発現させると、GRX mRNA量は野生型に比べ25-140倍と非常に高かったが、タンパク質の発現は20%の個体においてのみ確認された。このことからGRX1aの発現には翻訳または翻訳後の調節が関与していることが考えられた。またGRX1aタンパク質の発現が見られた個体においては、野生型に比べパラコート耐性、グルタチオン還元酵素活性の低下が見られた。これらの結果から、異所的に発現させたGRXにより細胞内レドックスバランスが変化し酸化ストレス耐性が低下した可能性が示唆された。