抄録
環境・食糧問題が顕在化した今日、汚染土壌の再生と利活用はバイオマス・食糧増産の観点から極めて重要である。我々は共生窒素固定能など有用な特徴を数多く持つマメ科植物を用いた酸性土壌の修復技術を開発するために、大腸菌機能発現スクリーニングによって、ダイズから23個の耐酸性遺伝子を単離した。選抜した6遺伝子を異種過剰発現したシロイヌナズナは耐酸性能を獲得した。今回、充実した研究リソースを活用して有利に機能を明らかにするために、シロイヌナズナのオルソログ遺伝子を解析した。ダイズの耐酸性遺伝子を問い合わせ配列としてBLASTP検索を行い、アミノ酸配列が50-86%の同一性を持つそれぞれのシロイヌナズナオルソログ遺伝子を同定した。RT-PCRによって器官別の各遺伝子の転写物の蓄積を確認したところ、ダイズ遺伝子とシロイヌナズナオルソログの間でその発現パターンは類似していた。これまでにsoy28、soy42、soy49のシロイヌナズナオルソログ遺伝子のT-DNA挿入破壊株を単離し、それらの表現型解析を行った。その結果、すべての破壊株で酸性ストレス高感受性を示し、soy28オルソログ破壊株では葉の形態形成異常が同時に見られた。これまでの結果から、これらの3遺伝子とそのオルソログは植物の酸性ストレス耐性に必須であることが明らかとなり、大腸菌を用いた耐性遺伝子のスクリーニングが有効であることが証明された。