小児歯科学雑誌
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臨床
幼児の口蓋粘膜に生じた歯原性過誤腫性病変の1症例
井上 友紀藤田 晴子小野 芳明岡田 憲彦高木 裕三
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2009 年 47 巻 3 号 p. 500-505

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抄録

東京医科歯科大学歯学部附属病院小児歯科外来において,口蓋粘膜にエプーリス様の腫瘤を認め,その病理組織診断では歯原性過誤腫性病変であるとされた症例を報告する。患児は2歳6か月の男児で,既往歴および家族歴,全身所見に特記すべき事項はなかった。上顎左側乳中切歯部の口蓋粘膜に表面平滑な歯肉色の隆起性病変を認め,エックス線写真ではその腫瘤の基底部相当部にエックス線不透過像を,また,上顎乳中切歯間には順生埋伏過剰歯1歯を認めた。全身麻酔下に腫瘤と腫瘤直下の石灰化物を摘出し,同時に順生埋伏過剰歯を抜去した。術後の経過は良好で,再発は認められない。腫瘤の病理組織では粘膜上皮下に豊富な粘液腫様性間葉組織の増殖がみられ,索状あるいは微小胞巣構造を呈した歯原性上皮成分が少量混在していた。また,エナメル上皮成分や異形成象牙質と思われる硬組織の形成も認められたので,歯原性過誤腫性病変と診断した。さらに,腫瘤の直下に存在した石灰化物は歯牙様構造を呈しており埋伏過剰歯といえるが,この石灰化物の存在が何らかの刺激となって腫瘤が形成されたものと考えた。

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© 2009 日本小児歯科学会
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