抄録
イネが病原菌を認識して誘導する免疫反応の一つに活性酸素の発生が知られている。イネに非病原菌を接種すると速やかな活性酸素発生が認められるが、Ca2+阻害剤、リン酸化阻害剤の処理によって抑制された。そこで、免疫反応誘導時における細胞内Ca2+の変動をYellow cameleon 3.6を用いて調べたところ、非病原性菌株接種後、急激な細胞内Ca2+濃度の上昇が認められたが、病原性菌株ではCa2+の上昇は認められなかった。この様に免疫反応誘導時の活性酸素発生にはCa2+の変動とリン酸化が必要なことから、CPK(calcium-dependent protein kinase)が関与している可能性があると考え、イネゲノム上に存在する29個のOsCPKの発現パターンを解析したところ、6個のOsCPKが免疫反応誘導時特異的に発現誘導されることが示された。そこで、これらのOsCPKについてRNAi形質転換体を作製したところ、OsCPK12のRNAi形質転換体で活性酸素発生が抑制された。次に、OsCPK12と活性酸素発生に関与しているOsrbohとの相互作用をBiFC法で確認したところ、OsrbohAのN末端との相互作用が見られた。このことから、OsCPK12はCa2+依存的にOsrbohAのN末端をリン酸化することで、活性酸素発生を制御している可能性が示唆された。