2021 年 30 巻 1 号 p. 49-52
慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease; COPD)は単なる呼吸器疾患ではなく,多くの併存症を有する全身性疾患として捉えられており,中でも骨格筋機能障害は身体機能だけでなく生命予後にも関わる問題であると考えられている.
COPDではタイプI線維(遅筋線維)が減少し,タイプII線維(速筋線維)が増加するという筋線維タイプの変化が生じることが分かっているが,高齢者が多い本邦のCOPD患者ではタイプI線維,タイプII線維ともに筋萎縮が著明となっているため筋力トレーニングが重要となる.しかし高齢で呼吸困難が強い重度のCOPD患者に対し,特にタイプII線維を強化するための高負荷でのトレーニングは困難である場合が多い.
神経筋電気刺激(NMES)は,筋を収縮させる際に脳からの指令を介さずに直接運動神経を刺激することで,他動的に筋収縮を誘発させるものであり,近年,重症COPD患者に対するNMESの効果に関する多くの研究が報告されている.