抄録
短日植物であるキクは日長の短縮により花成が誘導され、暗期中断によって花成が抑制される。キクの花は多数の小花からなる集合花であり、中心部の管状花と外側の舌状花からなる。我々は二倍体野生ギク、キクタニギク(Chrysanthemum seticuspe f. boreale)を用いて、花芽分化開始ならびに、花芽分化開始後の花器官の発達における短日要求性に着目した。キクタニギクは4回の短日処理後、暗期中断(花芽非誘導)条件下においた場合、花芽分化を開始し、花芽分化節位が決定された。しかし、花芽分化開始後の発達は暗期中断によって抑制され、小花の分化はみられなかった。12回以上の短日処理によって暗期中断条件下においても小花の発達が進み、開花する個体がみられたが、8回の短日処理では小花が分化した段階で発達が停止した。AP1と相同性を示すCsM111および、LFYと相同性を示すCsFLの発現は8回以上の短日処理によって誘導され、AGと相同性を示すCsAGの発現誘導には12回以上の短日処理が必要であった。以上の結果からキクタニギクにおける、花芽分化開始と花器官の発達における日長要求性について考察する。