抄録
crp-1D(cryptic precocious-1D)変異体はFT過剰発現体の花成早化表現型を昂進する優性変異体として単離された。crp-1D単独変異体は野生型よりわずかに早咲き表現型を示す。crp-1D変異は茎頂または維管束でFTを異所発現させた植物の早咲き表現型に対しても昂進作用を示すのに対し、crp-1D変異体とft機能欠損変異体ft-2との二重変異体はft-2と同程度の遅咲き表現型を示した。これらの結果より、crp-1DはFTによる花成促進経路で花成を正に制御する可能性がある。CRP遺伝子は転写メディエーター複合体キナーゼドメインのサブユニットMed12に相当するタンパク質をコードする。crp-1Dがキナーゼドメインの中で花成促進にはたらく可能性を検討するために、同じドメインのMed13機能欠損変異体med13とcrp-1Dとの二重変異体を作出したところ、crp-1D;med13はmed13と同程度の遅咲き表現型を示した。さらに、35S::FT;crp-1Dの極早咲き表現型はmed13によって抑制された。これらのことから、crp-1Dの花成促進効果はMed13に依存しており、メディエーター複合体機能を介するものであると考えられる。これらのcrp-1Dの表現型をふまえ、crp機能欠損変異体を用いてCRP遺伝子と花成関連遺伝子との関連について現在解析を進めている。