抄録
植物や藻類の光化学系I(PSI)複合体は、集光性クロロフィルタンパク複合体I(LHCI)を結合し、PSI-LHCI超分子複合体(PSI-LHCI)を形成する。高等植物では6種類のLHCI遺伝子が存在し、PSIに4から5コピーのLHCIサブユニットが結合している。近年報告されたアラスカ豆のPSI-LHCI のX線結晶構造解析では、4つのLHCIがPSI複合体に結合していた。これに対して緑藻クラミドモナスでは、PSI-LHCIには9種のLHCIサブユニットが存在するが、電子顕微鏡による構造解析ではLHCIサブユニットは6から11コピー存在すると報告されている。本研究ではクラミドモナスのLHCIサブユニットのコピー数を生化学的に求めたので報告する。クラミドモナスの全タンパク質を14Cでラベルし、チラコイド膜を単離しドデシルマルトシドで可溶化後、ショ糖密度勾配超遠心法によりPSI-LHCIを精製した。LHCIポリペプチドは近接して分離されるので、単一のバンドまたはスポットに単一のタンパク質が分離されるように電気泳動の条件を最適化した。泳動後、14Cの放射線をラジオルミノグラフィーで検出後、シグナル強度をタンパク質の炭素数で除した値から、PSI複合体のサブユニットに対するLHCIサブユニットの量比を求めた。得られた定量結果とLHCIの構造について議論する予定である。