抄録
シリカメソ多孔体は内部にナノサイズの細孔を大量に持つ粉末状の無機素材である。我々はこれまでに、精製された紅色光合成細菌T. tepidumのアンテナタンパク質LH IIをタンパク質サイズに適合した細孔内径をもつシリカメソ多孔体に導入する方法を開発した(1)。LH IIは細孔内で活性を保ち、より高い熱耐性を示した。さらに我々は、精製した好熱性シアノバクテリアThermosynechococcus vulcanus由来の光化学系 II (PSII) コア複合体(分子量756 kDa)をシリカメソ細孔内部に吸着させ、細孔内部のPSIIが熱耐性を維持したまま酸素発生する事を示した。
本研究では、新素材の板状シリカメソ多孔体へPSIIを吸着させた。この素材は透明で粉末状のものと異なり、可視光を散乱しない特徴を持つ。吸着したPSIIの吸収、蛍光スペクトルは変化せず、PSIIの構造は維持されている事が示された。共焦点レーザー顕微鏡により、板状シリカメソ多孔体内部のPSIIの分布を可視化した。板状シリカメソ多孔体内部に吸着したPSIIの活性を議論する。
(1) [Oda, I., Journal of Physical Chemistry B, 2006. 110(3): p. 1114-1120.]