日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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シロイヌナズナにおけるスルホ糖脂質生合成経路の解析
*田中 宏憲下嶋 美恵太田 啓之
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p. 0612

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抄録
スルホキノボシルジアシルグリセロール(SQDG)は、葉緑体のチラコイド膜を構成する硫黄を含む糖脂質である。最近の研究により、シロイヌナズナの葉緑体内でグルコース-1-リン酸(G1P)からUDP-グルコースを生成する酵素UDP-グルコースピロホスホリラーゼ(UGP3)がSQDGの生合成に必須であることが分かった。緑藻クラミドモナスのUGP3ホモログ欠損変異体はリン欠乏、硫黄欠乏では野生株に比べて急速に枯死するが、それらを同時に欠乏させると野生株と変化がないという表現型が報告されている。そこで我々は、シロイヌナズナのUGP3過剰発現変異体を作製し、栄養欠乏条件下における生育と脂質組成を、野生株およびUGP3欠損株と比較した。その結果、有意な差が見られなかったことから、栄養欠乏条件下におけるUGP3の役割が高等植物と緑藻において異なることがわかった。また、葉緑体内のG1Pはデンプン生合成に必須であり、その供給を担うホスホグルコースイソメラーゼの欠損体pgiではデンプンの蓄積がほとんど見られない。そこで、同じG1Pを基質とするSQDG生合成への影響を調べるため、このpgi変異体の脂質組成を解析したが、野生株に比べて大きな変化は見られなかった。このことから、葉緑体内のSQDG生合成は、デンプン生合成とは異なるG1Pプールを利用していることがわかった。
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© 2010 日本植物生理学会
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