日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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開花制御の数理モデル:一年草と多年草、そして間欠的繁殖を分ける分子機構
*佐竹 暁子
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p. S0046

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抄録
多くの植物種では、開花量や種子量が著しく年変動し、個体間(ときには植物種間)で同調することが知られている。これは、温帯地域ではマスティング、熱帯地域では一斉開花とよばれ、古くから生態学者の興味を惹いてきた。これまでの生態学的研究では、低温や乾燥などの気象要因と資源量状態などの内的要因の両者が、マスティングの引き金となり得ることが指摘されている。しかし、開花量および結実量と気象要因の観測データのみを用いたアプローチでは、気象要因と内生要因がどのように統合され、最終的に花芽形成を引き起こすのか、その相対的重要性を検討できない。一方、近年、シロイヌナズナやイネなどのモデル植物を対象に、開花時期制御機構の分子レベルでの解明が急速に進んでいる。その結果、気温・乾燥ストレス・光などの環境要因と植物サイズ・齢といった内生要因が、花成関連遺伝子の発現を制御し、開花時期を左右する仕組みが、次々と明らかになってきた。
講演者は、こうした分子生物学で蓄積された知見を典型的なマスティング種であるブナに応用し、マスティングの分子機構を解明するプロジェクトを推進している。本講演では、このプロジェクトの数理的側面に焦点を当て、これまで開発された3つの数理モデル、1.資源収支モデル、2. 春化依存促進経路における開花制御の数理モデル、3. エピジェネティック制御の数理モデル、を紹介する。
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© 2010 日本植物生理学会
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