抄録
自家不和合性(SI)は、顕花植物において自殖を妨げるための遺伝的メカニズムである。ペチュニアを含むナス科植物では、非自己花粉管内において、花粉側因子を構成するSLF(S-locus F-box)が細胞毒性を持つ雌しべ側因子S-RNaseを非自己アレル産物特異的に認識し、解毒することによって、非自己花粉管の伸長をサポートしている。我々は最近、一部の非自己S-RNaseを選択的に認識するSLFsが複数機能し、多数存在する非自己S-RNaseを協調的に認識、解毒しているという、「協調的非自己認識」モデルを提唱した。我々は、少なくとも3つのタイプのSLF(タイプ-1、-2、-3 SLFs)が、それぞれ異なる一部の非自己S-RNaseを選択的に認識することを示したが、3つのタイプのSLFだけでは認識されないS-RNaseの存在も示されたことから、花粉側因子として機能する他のタイプのSLFの存在も示唆された。本研究では、新規なタイプのSLFの探索を進めると共に、花粉側因子としての機能を形質転換実験によって調べた。その結果、新たな花粉側因子候補を見出したので報告する。