抄録
miR156/157は植物特異的転写因子SBP-box遺伝子を標的とし、生長相の移行を負に制御するmicroRNAである。シロイヌナズナのmiR156/157過剰発現体では、花成遅延、葉の幼若化、頂芽優勢の欠失がおこる。miR156/157の配列は種を越えて高度に保存されているが、機能の保存性を検証するため、シロイヌナズナのmiR157bを過剰発現(miR157b-ox)させたシロイヌナズナとトレニアの比較解析を行った。miR157b-oxトレニアは葉の幼若化、頂芽優勢の欠失など、シロイヌナズナと同様の表現型を示した。また、個体あたりの葉の生重量および枚数が増加していたことから、バイオマスの増大にmiR157b-oxが有効であると期待される。miR157bの過剰発現がトレニア内生遺伝子の発現に与える影響を調べるため、トレニアのSBP-box遺伝子を単離し発現解析を行った。単離した6遺伝子中3遺伝子の発現量が減少しており、標的配列の差異が発現制御の特異性を決定していることが示唆された。同様の現象はmiR157b-oxシロイヌナズナを用いた解析でも確認された。標的配列の差異に加え、miR157とmiR156は2塩基の配列の違いがあり、これらのmicroRNAの発現パターンと標的遺伝子の特異性により、SBP-box遺伝子群の発現を精細に制御していると考えられる。