日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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葉原基におけるFIL発現パターンの厳密な制御には正常な葉緑体機能が必要である。
*為重 才覚近藤 真紀渡辺 恵郎豊倉 浩一槻木 竜二西村 幹夫岡田 清孝
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p. 0202

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抄録
陸上植物の葉の多くは、平面的で向軸側(表側)と背軸側(裏側)とで細胞分化のしかたが異なる。このような性質を持つ葉を形成する上で、葉原基の段階から向軸側あるいは背軸側で特異的に発現する転写因子群の機能が重要であると言われている。中でもFILAMENTOUS FLOWER (FIL)は背軸側特異的に発現して葉の平面的な成長と細胞分化を促すことが知られている。
我々が最近単離した新規なシロイヌナズナ突然変異体enlarged fil expression domain2 (enf2)はFILの発現領域が、野生型に比べて広いという表現型を示す。この変異体を用いた解析から、葉緑体の遺伝子発現が異常になると、FILの発現領域が広くなることが示唆されて来た。葉緑体の状態に応じて核の遺伝子発現を制御するという葉緑体シグナルについて、特にGUN1タンパク質に依存したシグナルの存在がよく知られている。GUN1の機能を欠いた変異体gun1enf2の二重変異体を作製したところ、FILの発現パターンは野生型に近いパターンを示した。以上のことから、葉緑体の遺伝子発現状態に応じて、GUN1を介してFILの発現パターンを制御する機構が存在すると考えられた。現在、葉緑体の状態に応じてFILの発現パターンが変化するときの細胞自律的、非自律的な影響を解析中であり、本発表ではその進捗状況も含めて議論したい。
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© 2011 日本植物生理学会
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