抄録
ABI1はタンパク質脱リン酸化酵素2Cをコードし、アブシジン酸(ABA)情報伝達において上流で働くことが知られている。我々はABI1を介したABA情報伝達因子を同定するため、シロイヌナズナにYFP-ABI1融合タンパク質を過剰に発現させた形質転換体を作成し、GFPアフィニティーカラムおよび高精度のLC-MS/MS解析を行った。ABI1の相互作用因子として、ABAによって活性化するタンパク質リン酸化酵素であるSnRK2ファミリーや9つのABA受容体として報告されたPYR/PYL/RCARファミリーのメンバーを同定することに成功した。また、pyr1pyl1pyl2pyl4四重変異体はABAによる気孔の閉口応答を阻害することを見いだした。
X線結晶構造解析法により、我々はPYR1単体とABAが結合した状態のPYR1の立体構造を明らかとした。PYR/PYL/RCARの内部にある空洞にABAが入り込み結合すると、Pro-CapとLeu-Lockと呼ばれる2つの領域が構造変化を引き起こし、これらが蓋の役目をし、PYR/PYL/RCARはABAと安定な複合体を形成することを見出した。PYR1はABAの有無に関わらず二量体を形成するが、 ABAが取り込まれることで不安定かつ対称な2量体となることを示した。