日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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コブトリンの作用に対するペクチン側鎖アラビナンの分枝構造の影響
*米田 新伊藤 卓也斉藤 臣雄長田 裕之出村 拓
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p. 0526

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抄録
セルロース微繊維とペクチンは植物一次細胞壁の主要な構成成分であり、それらの物理的特性は細胞の形態形成や維持に重要な役割を担う。これまでにペクチン側鎖のアラビナンがセルロース微繊維と結合し、結果ペクチン複合糖鎖がセルロース微繊維間を架橋するという報告があるが、アラビナンがどのようにセルロース微繊維と相互作用するのかは未知である。私たちはこれまでにセルロース微繊維の配向を乱す新規阻害剤コブトリンを発見し報告して来た。過去の治験からコブトリンはペクチン関連因子に作用すると考えられが、ペクチン主鎖には結合しないことから、コブトリンはペクチンの側鎖に作用すると推測される。そこで、ペクチンRG-Iの主な構成成分であるアラビナンを培地中に添加したところ、コブトリンによる細胞肥大が抑制された。この抑制効果は、1,2-ないし1,3-結合の分枝構造を持つアラビナンでは非常に高いのに対し、1,5-結合のみの直鎖状アラビナンではほとんど見られなかった。また、同様の阻害効果は1,2-ないし1,3-結合の分枝アラビナン残基を加水分解するアラビノフラノシダーゼで処理すると顕著に見られたが、1,5-結合を加水分解するエンド型アラビナナーゼ処理では観察されなかった。以上のことから、コブトリンはペクチンRG-I側鎖の分枝型アラビナンに作用し、アラビナンがセルロース微繊維に結合するのを阻害することが示唆された。
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© 2011 日本植物生理学会
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