抄録
すべてのシアノバクテリアには、C末端領域にAbrB型DNA結合ドメインを持つ推定転写制御因子 (cyAbrB)をコードする遺伝子が、複数コピー存在している。Synechocystis sp. PCC 6803における2つのcyAbrB遺伝子、sll0822とsll0359をそれぞれ挿入破壊したところ、完全な遺伝子破壊株は、sll0822についてのみ得られた。sll0822破壊株では、窒素関連遺伝子(amt1、urtA、glnB等) の発現レベルの減少に起因するグリコーゲンの高蓄積や、細胞分裂関連遺伝子(ftsZ、ftsQ) の発現レベルの減少に起因する細胞サイズの増大などが観察された。sll0822破壊株に対し、cyAbrBを過剰発現させたところ、sll0822を過剰発現させた場合に加え、sll0359を過剰発現させた場合にも、sll0822破壊株の表現型の部分的な相補が観察された。したがって、Sll0822とSll0359は通常培養条件下で、炭素・窒素代謝や細胞分裂の制御に関して、協調的に働いていると考えられる。また、sll0822、sll0359それぞれの過剰発現株から両者が共精製されたことから、細胞内での両者の相互作用が示唆された。