抄録
アポプラスチックバイパスフロー(以下バイパスフロー)は根において、もっぱらアポプラストを経由する水輸送の経路のことである。イネのバイパスフロー速度は塩ストレスによって、促進されることが知られている。本研究では、重金属のひとつであるカドミウムがバイパスフローに及ぼす影響を解析した。
100 μMカドミウム処理により蒸散速度は低下したが、アポプラストを経由した水輸送速度は上昇した。無ストレス条件下では、水耕栽培したイネのバイパスフローは蒸散流全体の5%以下であるが、100 μMカドミウム処理によって、これが約20%まで上昇することが示された。また、バーベリンブルーによりカスパリー線を組織化学的に観察したところ、カドミウム処理により、外皮におけるカスパリー線の構造が部分的に崩壊していることが示唆された。
以上の結果より、カドミウムはカスパリー線の水に対する不透性を低下させることで、バイパスフローを促進すると考えられた。